こんにちは代表の野間でございます。弊社ではお客様のIPOの成功の為の各種サポートを行っています。IPOに関する情報を定期的に配信し少しでもお役に立てますと幸いです。
IPOが会社にとって大きな飛躍のチャンスになることは言うまでもありませんが、達成にあたっては数々の苦労が伴います。IPOのハードルについて項目ごとに簡単まとめます。
【IPOのハードル ⑶組織体制や文化への影響】
新規上場をすることによりプライベートカンパニーから社会の公器としての役割を求められることとなります。従って強固な組織体制が求められたうえで、社会の諸課題への対応も求められます。この観点からIPOの組織設計に係わる事項についてご説明いたします。
Ⅰ.機関設計
会社法では会社の機関設計について様々な選択肢がとりうるものとされていますが、上場企業については実質的に3つの機関設計の選択肢しかないと考えられます。
▸監査役会設置会社(代表取締役+取締役会+監査役会)
上場をすることにより、例えば一般の投資家などのように広い範囲で多くの関係者が会社に関わることとなります。ステークホルダーが増えることに伴いその保護の観点から、これまで以上に強固な監視体制が求められます。代表取締役の業務執行に対し取締役会による監視・監査役会による監視がなされるのがこの組織形態です。3名以上の取締役による会議体である取締役会の決議を経なければ執行できない業務が発生し、また業績などの会社の状況が都度報告されることでけん制機能が発揮されます。コーポレートガバナンスコードの求めにより、独立社外取締役を2名以上登用する必要がある点についても留意してください。また、監査役人数3名以上の監査役で構成され、その構成員の半数以上は社外監査役でなければならない監査役会(会社法335条3項)により取締役の業務執行を監査します。監査役は監視機能を保持する為業務執行を行うことができず監査に専念する役員です。
▸監査等委員会設置会社(代表取締役+取締役会+取締役会内に監査委員会)
この形態では監査役が不要である代わりに取締役の中から監査等委員を選定し監査等委員会を組織する必要があります。(会社法327条2項)監査等委員を構成する取締役の「過」半数(監査役会は半数以上)が社外役員であることが求められる一方、監査等委員会を含む取締役会全体で求められる独立社外取締役の数が2名以上でよいため、求められる最低社外役員数を減らすことができます。一方で監査等委員も取締役会において議決権を持つことから、けん制が強化されることを意図した形態であると言えます。監査役の任期が4年なのに対して監査等委員の任期は2年であることにより会社の自由度が増すこと、重要な業務執行の決定を取締役に委任することができ機動的な取締役会運営ができるようになることなどから近年この組織形態は増加傾向にあります。一方で導入に手間がかかる上監査法人による会社法監査が上場前から求められることにご留意ください。
▸指名委員会等設置会社(代表取締役+取締役会+取締役会内に指名・報酬・監査委員会)
取締役会内に3つの委員会を設け、指名委員会では取締役の選任を、報酬委員会ではその報酬を、監査委員会では監査を担わせる組織形態です。各委員会を構成する取締役の「過」半数が社外役員である必要がある上、組織形態が複雑でありIPO準備会社においては採用されることが少ないと言えます。各委員会の存在により公正な組織運営が可能になることを意図した組織形態であると言えます。導入に手間がかかる上監査法人による会社法監査が上場前から求められることにご留意ください。
Ⅱ.管理体制の強化
上場することでステークホルダーが増加することに伴い、会社の公正な運営がより強く求められることとなります。特に「永続性」はキーワードになります。例えば過重労働や未払い残業がある会社は社会的に許されるものではない上、会社の永続的な繁栄の妨げになります。パワハラやセクハラに代表されるハラスメントが存在している会社についても同様です。また、特定の従業員に多くの権限が集中している(例えば事業部門を統括する者と管理部門を統括する者が同一である場合など)状況や、特定の従業員が欠けた場合に各業務の運用が滞る状況が想定する場合にも会社の永続的な繁栄は難しいと考えられます。このような状況にあると判断される場合には上場の承認が下りない為、強固な管理体制を設けることによる人的・金銭的コストは避けて通れません。
Ⅲ.企業文化への影響
上場する上で永続性の観点が重要であることは先に述べた通りです。これまでに延べてきたことと一部重複しますが、ベンチャー企業においては、一部の意欲が高く猛烈に働く従業員の存在により発展が保たれている状況なども珍しくはないかと思います。近年の社会の常識には必ずしも合致しない経営者の意向が組織風土となっている場合がある可能性もあります。徹底的な管理を求めず従業員個人の裁量に多くを任せた運営をしている例も多くみられ、がちがちに固められた内部統制と相いれない場合もあるかと思います。これらが必ずしも悪しきものとも限らないと個人的に思う一方、「社会の公器」であり「永続的」に繁栄する企業と社会から判断されるか慎重に考える必要があります。多くの場合IPOを目指すことにより企業文化に少なからず影響を与えることが多い点についても念頭に置く必要があります。
Ⅳ.外部の株主を意識した経営
非上場会社においては株主が近親な者に限定されている場合が多く、株主を意識した経営が強く求められない場合もあるかと思います。一方上場企業においては多くの株主が参入することからこれがより強く求められる可能性があります。例えば経営者の意向により儲けは度外視で取り組んでいる事業がある場合、これが多くの株主に受け入れられず自由に営めなくなる可能性があります。また新規事業に取り組む場合に株主を説得しなければならない要素も多くなるのではないでしょうか。株主への還元を求められる結果配当が必要となる場合もあり得るでしょう。このようにこれまでと比較し多くの利害関係者の意向を反映することにより自由な経営の妨げとなる可能性があります。
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